【 2025 年度 授業概要】
科   目 制御工学Ⅰ ( Control Engineering I )
担当教員 田原 熙昻 講師
対象学年等 電子工学科・4年・通年・必修・2単位【講義】 ( 学修単位III )
学習・教育
目標
A4-D3(100%)
授業の概要
と方針
フィードバック制御系の基礎的事項の考え方やそれら相互間の理論的な一貫性を明らかにし,古典制御理論の体系を理解させる.



1 【A4-D3】 与えられた条件から微分方程式を作成し,伝達関数を求めることができる.
2 【A4-D3】 伝達関数からブロック線図が示せ,これらから制御系の特徴を理解することができる.また,ブロック線図を簡略化することができる.
3 【A4-D3】 制御系の時間応答を理解し,その特徴が理解できる.
4 【A4-D3】 ボード線図を描くことができ,周波数応答やゲイン余裕等を求めることができる.また,ボード線図から伝達関数を求めることができる.
5 【A4-D3】 各種安定判別法の違いを理解し,制御系の安定判別ができる.
6 【A4-D3】 根軌跡を描くことができ,最適なゲインを決定することができる.また,補償法による効果を定量的に評価できる.
7  
8  
9  
10  












1 微分方程式から伝達関数が求めることができるかを主に前期中間試験で評価する.また,伝達関数に関する課題を与え,レポートを提出させその理解度を評価する.
2 ブロック線図に関する理解度を主に前期中間試験で評価する.また,ブロック線図に関する課題を与え,レポートを提出させその理解度を評価する.
3 時間応答に関する理解度を主に前期定期試験で評価する.また,1次遅れ系の時間応答の違いに関する課題を与え,レポートを提出させその理解度を評価する.
4 ボード線図に関する理解度を後期中間試験で評価する.また,ボード線図に関する課題を与え,レポートを提出させその理解度を評価する.
5 各種安定判別法に関する理解度を後期中間試験で評価する.また,安定判別に関する課題を与え,レポートを提出させその理解度を評価する.
6 根軌跡に関する理解度を後期定期試験で評価する.
7  
8  
9  
10  




成績は,試験70% レポート30% として評価する.前期中間・定期試験,後期中間・定期試験の4回の平均点の70%と課題・レポートの30%の合計100点満点の60点以上を合格とする.状況により臨時試験を行うことがあるが,その場合は最高60点で評価する.
テキスト 「制御工学 第2版」:斉藤 制海・徐 粒 共著(森北出版)
参考書 「演習で学ぶ基礎制御工学」:森 泰親 著 (森北出版)
「制御工学基礎―フィードバック制御系設計に向けて」:水本 郁朗・佐藤 昌之(編著)/佐藤 孝雄・髙橋 将徳・大塚 弘文(著)
関連科目 応用数学I,電気回路I,II,III,電気数学,制御工学II
履修上の
注意事項
3年までの電気回路や物理,微分積分などの知識を必要とするので復習しておくこと.また,ラプラス変換の知識は重要であるのでしっかりと修得しておくこと.

【授業計画( 制御工学Ⅰ )】
上段:テーマ/下段:内容(目標、準備など)
1 制御工学の概要
専門学科を問わず適用される制御工学の特徴を理解する.自動制御技術の歴史を知り,これから学ぶ制御工学の概念を把握する.
2 数学的準備(ラプラス変換)
制御工学で使用される数学的知識の準備を行う.複素数とその演算,ラプラス変換,逆ラプラス変換などを理解し使えるようにする.
3 動的システムと数式モデル
動的システムの入出力関係の数式モデルが微分方程式であらわせる.
4 基本的要素と伝達関数1
ラプラス変換された伝達関数を用いて議論することのメリットを理解する.複数の基本的要素が接続された場合について,全体の伝達関数を求める.
5 基本的要素と伝達関数2
与えられた条件から,微分方程式等モデルをたて伝達関数を求める.
6 ブロック線図とブロック線図の合成
ブロック線図の特徴を理解し,伝達関数からブロック線図を求める.各要素毎に示されているブロック線図を簡略化させ,全体の伝達関数を求める.
7 これまでのまとめ
ラプラス変換,伝達関数,ブロック線図について演習を行う.
8 中間試験
第1回から第7回までの内容を試験する.
9 中間試験の解説,時間領域における応答1
中間試験の解説を行う.制御系の応答には,時間応答と周波数応答の2つがあることを説明する.また,1次遅れ系の伝達関数を逆ラプラス変換することにより時間応答の式を導出できることを理解する.
10 時間領域における応答2
2次遅れ系の減衰係数の違いによる応答の違いを理解し,一般の伝達関数の極の値による応答性の違いを理解する.
11 動的システムの安定性
動的システムの安定性の定義,特にBIBO安定性について説明する.s平面における安定根と不安定根に基づいて伝達関数の安定性を判断できることを理解する.
12 ラウス・フルビッツの安定判別
ラウスの安定判別法とフルビッツの安定判別法についてその判定方法や特徴を説明する.特性方程式からラウスの安定判別法とフルビッツの安定判別法で安定判別を行う.
13 周波数領域における応答
周波数応答の考え方と周波数伝達関数と伝達関数の関連について説明する.周波数応答には,ベクトル軌跡とボード線図が代表的であることを理解する.
14 ベクトル軌跡とナイキスト軌跡
周波数伝達関数からベクトル軌跡,ナイキスト軌跡を描く.特に,1次遅れ系のベクトル軌跡と周波数伝達関数の関連を理解する.
15 ラウス・フルビッツの安定判別法およびベクトル軌跡とナイキスト軌跡の演習
ラウス・フルビッツの安定判別法およびベクトル軌跡とナイキスト軌跡の演習を行う.
16 ボード線図
ボード線図の特徴について説明する.また,1次遅れ系や1次進み系などの基本的な要素のボード線図を描く.
17 ボード線図の合成
複数のボード線図が合成できることを説明する.ボード線図の合成を行うとともに,合成されたボード線図からその伝達関数を求める.
18 フィードバック制御系の構成と考え方
フィードバック制御系構成の基本的な考え方とフィードバック制御系の持つ利点を理解する.
19 ナイキストの安定判別1
ナイキストの安定判別法とその特徴を説明する.特性方程式からナイキストの安定判別法で安定判別を行う.
20 ナイキストの安定判別2
ナイキストの安定判別では,ゲイン余裕を求めることを説明する.実際に安定判別と同時にゲイン余裕を求める.
21 ゲイン余裕と位相余裕
ボード線図からも安定判別ができることを説明する.ボード線図を用いて安定判別し,ゲイン余裕,位相余裕を求める.
22 これまでのまとめ
フィードバック制御系の安定性の判別を理解し,安定性を判別する.
23 中間試験
22回までの範囲について中間試験を行なう.
24 中間試験の解答・解説等
中間試験の答案を返却し解答および解説を行う.「フィードバック制御系の定常特性,過渡特性の評価」の概念を説明する.
25 フィードバック制御系の応答特性と仕様(1)
フィードバック制御系の応答特性と仕様について,過渡特性に関するパラメータを中心に説明する.各パラメータの持つ意味を理解し,与えられた伝達関数に対して各パラメータを求める.
26 フィードバック制御系の応答特性と仕様(2)
フィードバック制御系の応答特性と仕様について,閉ループ周波数応答と開ループ周波数応答について説明する.フィードバック制御系の定常特性に関する定常偏差を見積もる方法を説明する.
27 補償器の設計
ゲイン補償,位相進み補償,位相遅れ補償などについて説明する.位相補償によってどのような効果が得られるかを定量的に評価する.
28 極配置と根軌跡
2次の伝達関数や2次以上の伝達関数に対する極配置の考え方を説明する.根軌跡とエバンズの根軌跡について解説し,根軌跡を描けるようになる.
29 根軌跡を用いた補償器の設計
ゲインKの決定方法に根軌跡があることを説明する.与えられた伝達関数から根軌跡を描き,条件に適合する最適なゲインを求める.
30 制御系の設計,補償器の設計の演習を行う.この一年間で行った「制御工学」を総括する.
制御系の設計,補償器の設計の演習を行う.この一年間で行った「制御工学」を総括する.


前期,後期ともに中間試験および定期試験を実施する. 本科目の修得には,60 時間の授業の受講と 30 時間の事前・事後の自己学習が必要である.