2024 年度無機化学Ⅰ シラバス

【 2024 年度授業概要】
科　　　目			無機化学Ⅰ ( Inorganic Chemistry I )
担当教員			宮下芳太郎教授
対象学年等			応用化学科・2年・通年・必修・2単位【講義】 ( 学修単位I )
学習・教育目標			A4-C2(100%)
授業の概要と方針			無機化学の基礎理論と元素の各論を学ぶことで，周期表を身近に感じ，多種多様な元素を含む物質の性質や化学変化に興味を持ち，化学反応式が手軽に書けるようにする．
到達目標		1	【A4-C2】元素記号，元素名を日本語および英語で書ける．無機物質の基本的な命名法が理解できる．
		2	【A4-C2】原子の構造に関する基礎的事項（水素原子モデルや量子数など）が理解できる．
		3	【A4-C2】各元素の電子配置と周期表における位置関係が理解できる．
		4	【A4-C2】原子の物性（原子半径とイオン半径，イオン化エネルギー，電気陰性度など）と周期表の関係が理解できる．
		5	【A4-C2】結晶構造や無機材料の概要について理解し，説明できる．
		6	【A4-C2】代表的な分子の構造や結合理論について理解し，説明できる．
		7	【A4-C2】水素，酸素およびs-ブロック元素の単体・化合物の製法や性質を理解するとともに，主な化学的現象を化学反応式で書ける．
		8	【A4-C2】原子の物性，熱化学および水素，酸素およびs-ブロック元素の各論に関する基本的な計算問題が解ける．
		9
		10
評価方法と基準	到達目標毎	1	元素記号，元素名を日本語および英語で書けるか，無機物質の基本的な命名法について理解し，説明できるかを，前期小テストおよび後期定期試験で評価する．
		2	原子の構造に関する基礎的事項（水素原子モデルや量子数など）について理解し，説明できるかを，前期中間試験で評価する．
		3	各元素の電子配置と周期表における位置関係について理解し，説明できるかを，前期レポートおよび前期中間・定期試験で評価する．
		4	原子の物性（原子半径とイオン半径，イオン化エネルギー，電気陰性度など）と周期表の関係について理解し，説明できるかを，前期レポートおよび前期定期試験で評価する．
		5	結晶構造や無機材料の概要について理解し，説明できるかを，後期レポートおよび後期中間試験で評価する．
		6	代表的な分子の構造や結合理論について理解し，説明できるかを，後期小テストおよび後期中間試験で評価する．
		7	水素，酸素およびs-ブロック元素の単体・化合物の製法や性質について理解し，説明できるか，主な化学的現象を化学反応式で書けるかを，後期小テスト，後期レポート，後期中間・定期試験で評価する．
		8	原子の物性，熱化学および水素，酸素およびs-ブロック元素の各論に関する基本的な計算問題が解けるかを，後期小テストおよび前後期中間・定期試験で評価する．
		9
		10
	総合評価		成績は，試験80%　レポート10%　小テスト10%　として評価する．100点満点で60点以上を合格とする．
テキスト			「無機化学基礎から学ぶ元素の世界」：長尾宏隆・大山大共著（裳華房）「新課程フォトサイエンス化学図録」：数研出版編集部編（数研出版）「化合物命名法－IUPAC勧告に準拠－第2版」：日本化学会命名法専門委員会編（東京化学同人）
参考書			「無機化学第3版: その現代的アプローチ」：田中勝久・中平敦・平尾一之共著（東京化学同人）「SDGs無機化学の基礎」：矢野重信・木下勇・山村剛士監修（培風館）「はじめて学ぶ大学の無機化学」：三吉克彦著（化学同人）「シュライバー・アトキンス無機化学〈上〉〈下〉」：M.Weller・T.Overton et al.共著，田中勝久ら訳（東京化学同人）「無機化学命名法－IUPAC2005年勧告－」：N.G.Connelly et al.共著，日本化学会化合物命名法委員会訳（東京化学同人）
関連科目			C1 化学， C1 基礎化学実験， C2 分析化学I， C2 応用化学実験I
履修上の注意事項			授業中，すべてのテキストおよび配付プリントを常に参照できる状態にしておくこと．

【授業計画（無機化学Ⅰ ）】
週	上段：テーマ／下段：内容（目標、準備など）
1	無機化学ガイダンス，元素の名称
1	2年から始まる専門科目としての「無機化学」の位置付けやその範囲について述べる．元素記号と元素名について説明する．超重元素の暫定的命名法についても触れる．
2	原子の構造
2	原子を構成する素粒子について説明する．同位体の存在と原子番号や質量数などについて述べるとともに，元素記号の表し方について説明する．
3	原子量，元素の存在度
3	質量欠損と原子量について説明する．地殻中の元素の存在度（クラーク数）および海水中や人体中などとの存在度の違いについて述べる．
4	水素原子モデル
4	電子がとびとびの特定の大きさのエネルギー状態（エネルギー準位）しかとれないことを水素原子の輝線スペクトルから説明する．水素原子モデルの歴史を述べ，原子半径や軌道をまわる電子のエネルギーに関して説明する．
5	量子数と軌道
5	量子数（主量子数・副量子数・磁気量子数・スピン量子数）という概念を導入し，軌道との関係について説明する．軌道の形について説明する．
6	遮蔽と有効核電荷
6	遮蔽や有効核電荷という概念を導入し，軌道のエネルギーとの関係について説明する．スレーターの規則による有効核電荷の推定についても説明する．電子の分布について説明する．
7	原子の電子配置
7	原子軌道と電子配置との関係について説明する．各原子の電子配置を規定する法則である構成原理（積み上げ原理），パウリの排他律，フントの規則について説明する．閉殻と半閉殻の安定性について説明する．
8	中間試験
8	1週目から7週目までの内容で中間試験を行う．
9	中間試験の解説，元素の分類と周期表
9	中間試験の解説を行う．元素の電子配置による分類（典型元素・遷移元素）と周期表上における位置関係について説明するとともに，族の名称についても述べる．
10	原子半径の周期性，イオンの生成
10	原子半径の周期性について説明する．陽イオンおよび陰イオンの電子配置や半径について説明する．
11	無機化学命名法(1)
11	比較的単純な無機物質の命名法（化学式，英語名および日本名）の基礎を説明する．
12	無機化学命名法(2)
12	引き続き無機物質の命名法に加え，イオンの命名法（化学式，英語名および日本名）についても説明する．
13	化学結合とエネルギー(1)
13	イオン化エネルギーおよび電子親和力の概念を述べ，それらの周期性を説明する．種々の方法で定義された電気陰性度について説明する．
14	化学結合とエネルギー(2)
14	金属性（非金属性）と元素の周期律や化学結合との関係を説明した後，対角線関係について説明する．種々の化学結合（共有結合，イオン結合，金属結合など）について相違点を説明する．共有結合性とイオン結合性についても触れる．
15	化学結合とエネルギー(3)
15	化学結合の結合エネルギーおよび結晶の格子エネルギーについて説明する．ヘスの法則について述べた後，ボルン-ハーバーサイクルの意味と簡単な計算方法を説明する．
16	結晶と無機材料(1)
16	3種類の金属の結晶格子（六方最密構造・立方最密構造・体心立方構造）について，類似点と相違点を説明する．
17	結晶と無機材料(2)
17	イオン半径比に基づくイオン結晶の種類について説明する．共有結合結晶と分子結晶について説明する．
18	結晶と無機材料(3)
18	代表的な宝石を紹介し，組成の類似点などを述べる．代表的な無機材料（合金，めっき，半導体など）について概要を説明する．
19	分子の形と結合理論(1)
19	原子価結合理論（VB理論）を用いて混成軌道や多重結合について説明する．
20	分子の形と結合理論(2)
20	原子価殻電子対反発理論（VSEPR理論）を用いて分子の構造を定性的に推定する方法を説明する．
21	分子の形と結合理論(3)
21	分子軌道理論（MO理論）を用いて結合次数や磁性について説明する．
22	水素と酸素(1)
22	最も簡単な元素である水素（H）の製法，物理的・化学的性質，反応性，貯蔵・運搬法について説明する．金属のイオン化傾向と水素の発生との関係についても触れる．特別な水素化合物である水素化物について説明する．
23	中間試験
23	16週目から22週目までの内容で中間試験を行う．
24	中間試験の解説，水素と酸素(2)
24	中間試験の解説を行う．酸素（O）の単体の物理的性質や電子構造，実験室的製法を説明する．
25	水素と酸素(3)
25	酸化物，過酸化物，超酸化物の生成や反応性について，酸素の酸化数と関連づけて説明する．オキソ酸の酸化力や酸性度について，酸化数の観点から説明する．オキソ酸の構造および命名法について説明する．
26	水素と酸素(4)
26	主なオキソ酸の製法と性質について説明する．非常に重要で身近な水素化合物である水の特異性について説明する．
27	1族元素(1)
27	アルカリ金属元素（Li，Na，K，Rb，Cs，Fr）の一般的性質（比重，融点，イオン化エネルギーなど）について説明した後，特に単体の水との反応性について述べる．
28	1族元素(2)
28	ナトリウム化合物の性質や反応を説明した後，工業的製法（溶融塩電解・イオン交換膜法・アンモニアソーダ法）を説明する．
29	2族元素(1)
29	アルカリ土類金属元素（Be，Mg，Ca，Sr，Ba，Ra）の一般的性質をアルカリ金属のものと比較しながら説明する．アルカリ土類金属化合物の性質や反応について説明する．
30	2族元素(2)
30	カルシウムとマグネシウムに関連して，水の硬度や石鹸の洗浄作用への影響など身近な事項について説明する．ベリリウムの特別な性質について述べる．
備考	前期，後期ともに中間試験および定期試験を実施する．